等身大の主人公に大共感!山本文緒「自転しながら公転する」
2023/05/26
子供の頃から読書が好きで、いつも傍らに本がありました。
バッグの中や枕元など、あらゆる場所に本があって、
休日は図書館にこもって過ごすことが大好き、
そして、いつも空想や妄想ばかりしていました。
それがとても心地よく幸せな時間でもあるのです。
以前は小説をよく読んでいたのに、
最近はビジネス書ばかり読み漁っていて、
ふと思い返してみると自分の中に「言葉」が
少なくなっていることに気づきました。
小説を読んで心躍る時間が、私には必要だと感じたのです。
コロナ禍で人と会う機会が減り、人恋しいこともあってか、
この数年、動画をよく観ていたという方、とても多いですよね。
かくいう私もそのひとり。
以前はあまり観ていなかったYouTubeやSNSに目を通す時間が増え、
スマホを使う時間がとてつもなく増えていきました。
しまいには、枕元に置いたスマホが気になって
「あ~これは完全に依存症だわ!」そう思うようになってから、
意識してスマホから少しずつ離れるようにしました。
そうすると時間に余裕ができ、「言葉」を読むことから
少し離れてしまっていた小説にも目がいくように。
そんな時に出会ったのが、多くの恋愛小説を生み出した作家・山本文緒が
最期に遺した長編小説「自転しながら公転する」。
文庫本で650ページを超える作品だったので、読み切れるかな?と思ったけれど
飲食も忘れてあっという間に読み終えました。
物語の主人公・都は、母の看病のため東京から実家の茨城県牛久市に
戻ってきた32歳の独身女性。
近所のアウトレットモールのアパレルで契約社員として働きながら、
回転寿司店で働く経済的に不安定な男性と付き合い始めるが…。
親の看病、彼との未来が見えない、職場のパワハラやセクハラと
プライベート&ワーク環境は問題だらけ。
おまけに地元の友達は、婚活で理想の相手と結婚や高収入で大人な彼氏ができたりと
自分の境遇と比較しては羨ましく思ったり…。
幸せに形も、定義も、答えもないのに、人は情報に溺れ不安になり
ただただ「幸せになりたい」と願う。
幸せが何なのわからずもがく主人公の都に自分を重ねて、
ラストシーンには「そうくるか!」と妙に納得してしまいました。
仕事、恋愛、友人、家族のことと、
日常で抱えるさまざまなことに目まぐるしく動きまっている都の姿は、
あまりにも等身大!共感できる部分がいっぱいなのです。
プロローグとエピローグも秀逸で、なるほど!としっかり伏線も回収。
このあたりの構成は、長編なのに飽きさせないマジックですね。
婚活するすべての女性に、頷きながら、時に涙しながら
ぜひ読んでもらいたい一冊です!